朗読4作目【ピロートークの夜に】


  2025/04/23に朗読しました!

AI生成キーワード「死神」「女の子」「「愛刀:ピロートーク」

ピロートークの夜に


 森の奥、月光だけが照らす静かな夜だった。風が木々を揺らし、草の香りと土の匂いが夜気に混ざっていた。その中央に、少女はぽつりと座っていた。

まるで世界から取り残されたように。

 リラ。十四歳。
 誰かに呼ばれたい気持ちと、もう誰にも会いたくない気持ちの間で、ずっと揺れていた。

「もう、誰もいらない……どうせ、みんな私を置いていくんだ」

 ぽつりとこぼしたその声に、誰かが応じた。

「この時間に森にいるのは、死にたがりか、死に損なった者だけだ」

 低く静かな声だった。驚いてリラが顔を上げると、そこに立っていたのは、漆黒のマントを纏った青年。長い銀髪が月光を受けて鈍く輝いている。その背には一本の刀があった。


「……誰?」

「死神だ。名はシグ」

「し、死神……? じゃあ、私を殺しに来たの?」

「そうでもあるし、そうでもない。君の命は、まだ天秤の上にある」


 冗談とも本気ともつかぬ言葉に、リラは思わず笑った。そんな自分の笑い声が、少しだけ寂しく響いた。

「ふーん……でも、ちょうどよかったかも。私、もう疲れちゃって」

 言葉を返す代わりに、シグは刀の柄に軽く触れた。すると、不思議なことが起きた。刀から、女の声が響いたのだ。

「彼女は悲しみに溺れすぎて、夢を見る力さえ忘れているのね。シグ、あなたはどうしたいの?」

「え、今の声……誰?」

「俺の愛刀、ピロートークだ。意思を持つ刀でな。語りを好む」

「“夢語り”の刀よ」と、ピロートークが囁く。「人は死ぬ前に、最後の夢を語るものだから」


 リラはその名前に、思わず笑ってしまった。「なんだか変。でもちょっと、素敵」

 風が木々を揺らし、森がざわめく。

「リラ。君に選ばせよう」シグが言った。

「このまま死を選ぶか、それとも、もう一夜だけ生を選ぶか」

「選んだって、変わらないよ。誰も助けてくれないし、何も戻らない」

「それでも、話してみる価値はあるわ」ピロートークが囁いた。「一晩だけ、夢を語ってみない?」

 しばらくの沈黙の後、リラはぽつりと答えた。

「……じゃあ、一晩だけ。話してみてもいい?」


   ◇


   火が灯された。小さな焚き火の前に、死神と少女と喋る刀が座っていた。不思議な光景だったが、不思議と心地よかった。

「小さい頃、私は絵を描くのが好きだったの」
 リラの声はかすれていたが、少しずつ、熱を帯びていった。

「お花とか、空とか。ぜんぶ、すごくキラキラしてて……あの頃は、“私、絵本作家になるんだ!”って思ってた」

「なぜ、やめた?」シグが静かに尋ねる。

「家が壊れたから」リラはうつむいた。

「お父さんが病気になって、お母さんが出ていって……私、大人にならなきゃって思ったの。夢なんて、箱にしまって……閉じ込めた」

「腐る夢も、花になるのよ」ピロートークが優しく囁いた。「あなたの夢は、まだ生きてる」

「腐る夢が……花に?」

「命とは不思議なものだ」シグが言う。

「絶望の底でこそ、芽吹くことがある」

 焚き火がぱちぱちと音を立てた。夜空に火の粉が舞い、星のように瞬いた。

「ねえ、死神っていつも人を殺すの?」

「いや。俺たちはただ、扉を見極める。開けるべきか、閉じるべきかを」

「でも、私が開けたらどうする?」

「止めるわ」ピロートークが断言する。「あなたがまだ語り足りないなら、私は斬らない」

「……ふふ、変なの。でも、ありがとう」


   ◇


   夜明けは、音もなく訪れる。

 空が白み、鳥たちが鳴き始めた頃、リラの顔から涙は消えていた。代わりに、柔らかな笑みが浮かんでいた。

「ねえ、シグ。……また会える?」

 その問いに、シグは少しだけ微笑んだ。

「君が夢を諦めた時、きっとまた現れる。だが、それがなるべく遅い日であることを願っている」

「さよならじゃないわ」ピロートークが囁いた。「これは、また語る日までの約束よ」

 リラは頷いた。

「うん。ありがとう、ピロートーク。次に会うときは……私の絵、見せてあげる」


   ◇


   死神と刀は、風のように去っていった。静かな森に、少女の足音だけが残る。

 それでも、彼女の胸には確かな灯りがともっていた。

 夢語りの夜――それは、命を繋ぐたったひとつの“ピロートーク”だった。


   ―終―


プロフィール

名前:追風みなみ(おいかぜ みなみ)
活動開始日:2024年7月19日(YouTube初配信)
活動内容:Vtuber/ゲーム実況/朗読/歌/雑談
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はじめまして!追風みなみです📣💫
2024年7月19日にYouTubeで個人Vtuberとしてデビューしました!
もともとはスマホアプリでのライバーとしても活動していた経験があり、今ではYouTubeをメインに、幅広いジャンルの配信を行っています。

🎮配信ジャンル
ストーリー系ゲーム、RPG、経営シミュレーション、モンスターハンターワイルズ参加型配信など、ジャンル問わずいろんなゲームにチャレンジ中!

さらに、歌配信・雑談配信・朗読配信など、ゲーム以外でも幅広く配信しています。

📖朗読配信を始めたきっかけ
参加型配信が大好きで、リスナーさんと一緒に楽しめる機会をいつも探していました。でも、ゲームだと「ソフトを持っていないと参加できない」という壁が…。
そこで思いついたのが「AIで物語をつくる朗読配信」でした。これなら誰でも参加できて、一緒に作品を作っていく楽しさもある!と思い、始めてみました♪


🌟リスナーのみなさんへ🌟
いつも応援してくれて、本当にありがとうございます。
みんなともっとたくさんの思い出を作っていきたい!
これからも楽しい配信を一緒に楽しんでいきましょう✨



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